神奈川大学 工学部・工学研究科 | 応用物理学科
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Published in Experimental Astronomy

スマホが、
宇宙線の観測装置になる。

誰の手の中にもあるカメラで、宇宙から降り注ぐ粒子を捉える。アプリ「宙豆(そらまめ)」の観測成果が、国際学術誌 Experimental Astronomy に掲載されました。

Paper / 論文情報
Journal
Experimental Astronomy(Springer)
掲載URL
https://link.springer.com/article/10.1007/s10686-026-10063-x
Authors
鷹野和紀子・有働慈治・塩見昌司・日比野欣也
Affil.
神奈川大学 工学研究所/工学部 応用物理学科・日本大学
宙豆アプリの画面。暗い背景に検出された宇宙線候補が表示されている SORAMAME · live detection view

私たちの体には今この瞬間も、宇宙から降り注ぐ宇宙線が毎秒100個ほど通り抜けています。ふだんは目に見えないこの粒子を、手持ちのスマートフォンやタブレットだけで観測できるアプリが「宙豆(そらまめ)」です。飛行機を使った高高度実験と、独自の小型検出器による検証をまとめた研究が、査読を経て国際学術誌に掲載されました。

01

宙豆ってどんなアプリ?

宙豆は、スマートフォンやタブレットに標準搭載されている CMOSカメラセンサーを放射線検出器として利用するアプリです。カメラを黒いテープなどで遮光し、真っ暗な状態で連続撮影すると、宇宙線由来の荷電粒子がセンサーを通過した瞬間に生じるかすかな光の点や筋(飛跡)を捉えられます。

専用の検出器のような大掛かりな機材も専門知識も不要。無料でダウンロードするだけで、誰でも観測を体験できるのが最大の特長です。海外の先行プロジェクト(DECO・CRAYFIS・CREDO)と比べても、アカウント登録が要らず、端末ごとのノイズに応じてしきい値を自動調整する点が宙豆の独自性です。

02

上空で宇宙線は増える ── 論文で確かめられたこと

iPhoneに宙豆を入れて実際の国際線に持ち込み、地上と上空(高度およそ1万メートルの巡航中)で検出頻度を比較する実験を2回行いました。いずれの便でも、高度が上がるほど宇宙線由来の粒子が増えるという教科書的な現象を、市販のスマートフォンだけで統計的に有意な形で裏付けることに成功しました。

Bangkok → Haneda
×5.3
地上に対する上空での検出頻度の増加(Z = 9.0σ)
Montreal → Narita
×7.4
地上に対する上空での検出頻度の増加(Z = 11.3σ)
03

ラズベリーパイ検出器で「地磁気の壁」を捉える

防水ケースに収められたラズベリーパイと高精細CMOSカメラによる小型検出器
Fig. 独自製作した防水プロトタイプ検出器(Raspberry Pi 4 + HQ Camera)

研究チームはさらに、ラズベリーパイ4に高精細CMOSカメラを組み合わせた防水仕様の小型観測装置を独自に製作しました。

この装置をグアム・バンクーバー・モントリオールから日本へ向かう各便に持ち込み、検出頻度の増え方を比較したところ、地磁気の緯度が高い便ほど頻度が高くなる傾向がはっきりと現れました。地球の磁場が低緯度ほど宇宙線を強くはね返す「地磁気シールド」効果と一致する結果です。

グアム・バンクーバー・モントリオールから日本への飛行ルートと、地磁気の強さの分布図
Fig. 3便の飛行ルートと地磁気の強さの分布。高緯度を通るルートほど宇宙線が届きやすい。
04

世界に広がる観測ネットワーク

宙豆で取得された観測データは、位置情報の公開に同意すると専用のWebダッシュボードに集約され、世界地図上に観測地点として表示されます。すでに北米・欧州・アジア・オセアニアなど各地から多くのユーザーが参加しており、教室や自宅から気軽に「市民科学(citizen science)」の一員になれます。

将来的には、世界中の未使用スマートフォンを活用した大規模観測網を築き、超高エネルギー宇宙線という物理学の未解決問題の解明に貢献することも目指されています。

宙豆のWebダッシュボードに表示される、世界各地の観測地点マップ
Fig. Webダッシュボードに表示される世界各地の観測地点。
Get started · 使ってみよう

あなたの端末で、宇宙線を捉えてみませんか。

宙豆は iOS/Android 向けに無料で公開されています。アプリを入れてカメラを遮光し、スタートを押すだけ。長時間の観測では外部電源の使用がおすすめです。

宙豆(SORAMAME)は神奈川大学工学研究所の鷹野和紀子が開発した宇宙線観測アプリです。今回の論文は、公益財団法人北野生涯教育振興会の助成を受けて実施された研究成果をまとめたものです。