宙豆
soramame


スマートフォンのCMOSカメライメージセンサーを活用した宇宙線観測

iOS,Android向け宇宙線観測アプリ そらまめ

宇宙線は、宇宙の起源や高エネルギー現象の理解に関わる重要な観測対象ですが、その検出には従来、専門的かつ高価な機器が必要でした。私たちは、スマートフォンやタブレットに搭載されているCMOSイメージセンサーの特性に着目し、宇宙線の簡易検出を可能にするアプリケーション「そらまめ」を開発しました。
このアプリは、宇宙から飛来する高エネルギーの荷電粒子がCMOSセンサーに入射した際に生成される微小な電荷を画像として捉え、リアルタイムで可視化します。検出されたデータはクラウド上のサーバーにも送信され、他のユーザーが取得したイベントとあわせてWeb上で確認できます。

「そらまめ」は、専門的な装置を必要とせず、一般のスマートデバイスで宇宙線の観測を可能にする点で、教育現場での活用にも適しています。宇宙線の検出は偶発的で長時間の観測が必要となるため、未使用の端末を活用して継続的にデータを取得することも推奨されます。

教育的な観点では、通常は目に見えない宇宙線の存在を自らの手で検出・観察することで、物理現象への理解が深まり、探究心を喚起することが期待されます。たとえば、高度や遮蔽、時間帯などの条件を変えて観測し、得られたデータを比較・分析することにより、探究型学習やデータ活用型授業への応用が可能です。

また、本アプリにはデータ共有機能も備わっており、他地域の観測結果と比較することで、協働的な学びや市民科学的な活動の一環として活用することもできます。今後は、検出精度の向上や教育カリキュラムとの連携、データ解析機能の充実などを通じて、さらなる学習効果の向上を目指しています。

「そらまめ」は、神奈川大学工学部応用物理学科 日比野研究室で開発しています。研究と教育をつなぐツールとして、科学への理解と関心を高める一助となれば幸いです。

使用済みスマートフォンの活用

世界中でタブレットやノートパソコンなどのインターネット接続可能なデバイの数は190億台を超えます。しかも、新しいバージョンがほぼ毎年リリースされ、多くのデバイスは数年のうちに買い替えられています。それでは、数年で使用されなるこれらのデバイスはどうなるのでしょうか?
これらのデバイスは小型ですが、非常に高度なコンピュータであり、多くの貴重なコンポーネントが含まれています。その中でも重要なのが、ほとんどのデバイスに搭載されているカメラセンサーです。このシリコンベースの半導体であるCMOSカメライメージセンサーが、「Soramame」宇宙線観測アプリの開発に利用されています。
古いスマートフォンやタブレットを再利用して宇宙線の的探究活動をしてみませんか?

soramame display introduction

Android

iOS

なぜ宇宙線?

宇宙線はとても身近な存在であるにもかかわらず、とても認知度が低い不思議な存在です。太陽からも来ていますし、天の川銀河からも、そしてもっと遠くからも届いています。何億年も宇宙を旅した後に地球にたどり着く粒子もあります。地上にも毎秒大量の宇宙線(一次宇宙線と大気の反応が生成した2時宇宙線)が降り注いでいます。 つまり広い宇宙から沢山のもの(エネルギーを持った粒子)が届いているにもかかわらず、それを実感せずに我々は生活しているということです。

なぜ毎秒毎秒大量の粒子が地球に届いているのでしょうか??何か役に立っているのでしょうか?まだ地球人が気がついていない宇宙線の意味があるのかもしれません。


世界中に190億台拡散するCMOSセンサーを活用し、地球規模の宇宙線の観測を目指す

宇宙線の中には、地球上の加速器では到底到達できないような、極めて高いエネルギーを持つ粒子が存在します。特に最も高エネルギーの宇宙線は、人工加速器の1000万倍(7桁以上)にも達するエネルギーを持つとされており、これらがどのような仕組みで加速され、どこからやってくるのかは、現代物理学における最大の未解決問題のひとつです。

このような高エネルギー宇宙線は、到来頻度が極めて低く、観測は容易ではありません。さらに、観測装置の設置や運用には高いコストが伴いますが、それでも世界中の研究者たちが、この謎の解明に挑み続けています。現在、複数の国際共同プロジェクトが進行しており、数千平方メートルにおよぶ広大な敷地に多数の検出器を設置し、日々宇宙から降り注ぐ粒子の観測が行われています。

宇宙線の起源を探るためには、粒子の到来方向の測定が重要ですが、観測された方向の先に明確な天体が見つからないことも少なくありません。これは、宇宙線が電荷を持つ粒子であり、宇宙空間に存在する磁場によって進行方向が曲げられてしまうため、元の出発点を直接的に特定することが難しいからです。

そのため、宇宙線の電荷、すなわち粒子の種類を特定することが極めて重要です。従来、宇宙線の主成分は陽子(水素の原子核)と考えられてきましたが、近年では、より重い鉄などの原子核である可能性も示唆されるようになってきています。

宇宙線が大気に突入すると、大気中の窒素や酸素などの原子核と反応を起こし、大量の2次粒子を生成する「空気シャワー」と呼ばれる現象を引き起こします。地上では、この空気シャワーによって生じる2次粒子を観測しており、粒子の種類や密度の分布から、一次宇宙線が陽子であったのか、あるいは重い原子核であったのかを推定する研究が進められています。

現在のところ、CMOSカメライメージセンサーを用いて空気シャワーを観測する試みはほとんど行われていません。その理由は、CMOSセンサーの面積が小さく厚みが薄く、またエネルギー推定が難しいという課題があるからです。しかし私たちは、空気シャワーの中でも特に粒子密度が高く、通常の観測装置では測定が困難な「コア領域」の観測において、CMOSセンサーが新たな可能性を持つと考えています。センサーの小型性と薄さが、逆にこのような高密度領域の観測に適しているのです。

また、これまでノイズとして扱われていたような微弱な荷電粒子の信号も、CMOSセンサーで捉えることができる可能性があります。これにより、空気シャワー内部の粒子密度の変化を、より高い解像度で観測できるようになると期待されます。

私たちは現在、CMOSセンサーを活用した全く新しい宇宙線空気シャワー観測手法の確立に取り組んでおり、この挑戦を通して、宇宙線の本質に迫るチャレンジをしています。

2025年4月30日 更新

お問い合わせ:鷹野 和紀子(r201970105fg_at_jindai.jp)
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